パレスチナ問題に関しては、一般的な日本人の解釈としては、パレスチナ側、イスラエル側のどちらかが正しく、もう一方が間違っているのではなく、互いにうまく共存していくのが良いという発想は受け入れやすいのではないかと思います。

しかし、実際に、長い間、苦しめられてきたり、幼いころから、憎むべき相手として教育されてきた当事者としては、なかなかそのような発想になるのは難しいのだろうと考えられます。

また、このような事態に至っても、米国は、イスラエル側をえこひいきしてきたのですが、ここにもやはり宗教が絡んでいるようです。

米国がイスラエルをえこひいきする理由

米国は、中国やロシア、その他の独裁国家と比べれば、民主的で、正しい選択をしているように見られますが、パレスチナ問題を引き合いに出せば、やはり、偏った選択をし、社会を分断するような、誤った行動に出ているように見受けられます。

その原因として、最も大きいのが、国民の四分の一を占める、福音派と呼ばれる、キリスト教原理主義の影響だと言われているようです。

原理主義と言えば、教典に書かれている事を忠実に解釈しようとする立場の人達の事を言いますが、例えば、創造論(地球上に初めて誕生した人類であるアダムとイブを神様が作ったといった話)や、ノアの箱舟などの物語を、歴史上の事実として信じているわけです。

日本では、ほとんどの人が、学校教育で、人間は動物から進化してきたという進化論を常識的に信じていますから、創造論などは考えられないと思いますが、アメリカ人の中には、進化論が間違っているという事で、学校に通わせなかったりすることもあるようです。

そのような環境で育っていれば、聖書の内容が、歴史的事実であると信じてしまうのも無理はないと考えられるのではないかと思います。

そして、聖書の内容から、ユダヤ人が、イスラエル国を建国することで、地上天国が実現されると信じるため、どれだけイスラエル人が、パレスチナ人を苦しめたとしても、イスラエルを支持することになります。

また、米国では、金や権力を持つユダヤ人が多数いるために、政府としても、イスラエルをえこひいきせざるを得ない状態になっているようです。

複雑なパレスチナ問題

また、当然のことながら、当事者間の宗教の問題も大きく影響しています。

ユダヤ教の教典は旧約聖書であり、ユダヤ教徒からすれば、旧約聖書の内容から、この地は、神が我々に与えてくれた土地だということになりますし、パレスチナ人からすれば、長く住んでいた土地を武力によって奪われ、苦しめられているという認識になるわけです。

また、軍需産業、その他、戦争が起こることで、利益を得る人達がいますから、そういった人たちが、戦争をするように仕向けているという見方もできます。

現代の日本人は、たまたま戦争のない平和な時代に生まれることが出来ましたが、戦後、ほんの数十年しかたっていないわけです。

まだまだ、個人的な欲望のために、戦争をするという野蛮な世界に住んでいるという事を理解しておく必要があるように思われます。

聖賢が本当に言いたかったこと

イエスキリスト

では、この問題をどのように解釈すれば良いでしょうか。

役に立ちそうな聖賢の言葉を引用してみたいと思います。

博愛主義

キリスト教と言えば博愛主義だと思いますが、イエスは以下のような言葉を残しています。

隣人を自分のように愛しなさい。

マタイ22-37

スピリチュアリズムで重要視されているシルバーバーチの霊訓にも、博愛の教えが説かれています。

すべての問題を解決する方法は、この言葉の中に凝縮されていないでしょうか。

シルバーバーチの霊訓(十一)p185

因果律、許しの教え

因果律は、捉え方によっては、非常にシンプルですが、釈迦は以下のような言葉を残しています。

実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息(や)むことがない。怨みを捨ててこそ息む。これは永遠の真理である。

ダンマパダ 5

因果律について理解できれば、許しや寛容の精神が大切であるということが理解できます。

シルバーバーチの霊訓にも因果律の教えは繰り返し出てきます。

シルバーバーチの霊訓(八)p203

以下は、イエスの言葉です。

あなたがたも聞いているとおり、『目には目を、歯には歯を』と命じられている。しかし、わたしは言っておく。悪人に手向かってはならない。だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい。

マタイ5-39

真理は無限、盲信しない

ちなみに、シルバーバーチの霊訓には、以下のような示唆に富む言葉も記されています。

真理は永遠不滅です。しかも無限の側面があります。なのに人間は自分が手にした一側面をもって真理の全体であると思い込みます。そこから誤りがはじまります。

シルバーバーチの霊訓(六)p191

知識と理性的判断の大切さ

以上のような教えが本当に大切な事であると考えれば、やられたからやり返すという、憎しみの連鎖を断つことができるように思います。

イエス、釈迦、ムハンマド、モーゼ、その他の聖賢が本当に伝えたかったことは、上記のようなことだったのではないかと思います。

パレスチナの土地は、ユダヤ人が住むべき土地であるという事が言いたかったのではないと考えれば、丸く収まるように感じられます。

しかし、このような事も、ある程度、科学、歴史、世界情勢などの客観的事実を理解した上で納得できることであると考えられます。

正しい知識を得る事、正しい情報を普及する事、啓蒙する事が、重要ではないでしょうか。

パレスチナを支持するアメリカ人

以前は、米国人は、盲目的にイスラエルを支持する人が多数を占めていたようですが、今回は、イスラエルのパレスチナ侵攻に反対する人も増えているようです。

生まれたときからネットのある環境で育った、いわゆるゼット世代の若者の中に、特にその傾向が強いようです。

つまり、ネットの情報から、パレスチナの歴史背景を知り、イスラエルの歪んだ正義に疑問を持つようになってきているということです。

パレスチナの歴史、惨状等の客観的事実をネットを通じて知ることで、パレスチナ問題を客観視することができるようになってきたという事が言えると思います。

正しい知識を得ることで、判断力が増していると言えます。

有益な情報を得て発信する

IT技術の急速な進歩によって、近年、急激に情報量が増えているように感じられます。

動画なども多数投稿されるようになり、視覚的、聴覚的に、情報を得ることが出来ますから、大量の情報を一気に吸収できるようになってきたと思われます。

戦争ですら、情報戦が非常に大きなウェイトを占めるようになってきたと言われます。

情報を制する者が、世界をコントロールするだけの大きな影響力を行使することができる時代に突入したわけです。

今回は、パレスチナ問題を例に挙げてみましたが、問題の本質、真の解決策を理解するには、それだけの知識と判断力が求められると考えられます。

日本の教育は、詰め込み式で考える力を養えない、思考停止にさせられているといったように、批判的な意見もありますが、最低限の歴史、科学、宗教等の知識が得られると思いますので、ここで紹介したような見解は受け入れやすいのではないかと思います。

このような思想の価値を理解した人が、まずは、自ら学び、実践し、普及していく事が重要と思いますし、そうした中で、宗教の教義に疑問を感じた人、経済至上主義の問題に気づいた人が、その情報に触れられる体制を築いていくようにすれば、少しずつ、問題の根本的な解決策が広まっていくのではないでしょうか。

現代は、世の中が急激に変革する時期に差し掛かっているように感じられます。